2021年03月12日

自筆証書遺言(その1)

 「相続」を「争族」としないために遺言を作成しましょうとはよく言われるところであり、弁護士の立場からそのとおりだと思います。

 では実際どれくらい遺言の作成がなされているか調べてみました。
 遺言には、主に自筆証書遺言と公正証書遺言があるのですが、まず自筆証書遺言について
 これは自分で全文、日付、氏名を自書(手書き)し、押印することで成立する遺言ですが、遺言者が亡くなった後、家庭裁判所で検認(*)という手続きをとる必要があります。
 そこで裁判所が発表している司法統計をみてみると、全国の家庭裁判所への検認の申立件数(正確には新受件数)は平成28年から年間1万7000件台で推移し令和元年は1万8000件を超えて18,625件となっています。

 検認手続きにあがってこない埋もれたままの遺言書があることも想像されますが、遺言の執行(不動産の相続登記や金融機関の相続手続きなど)には検認を経ていることが必要ですから、それらはなかったのも同然であり、ここでは無視してよいと思います。

 従って、検認件数をもって自筆証書遺言の作成数とみてよいと思いますが、この数字は、全国の年間死者数のうち75歳以上の方は、平成28年頃から毎年だいたい100万人位のようですから(人口統計資料集による)、単純な見方かもしれませんが、その人数からするとかなり少ないのではないかと思います。

*検認
 遺言書の形状、状態などを確認し、その内容を明確にして遺言書の偽造・変造を防止するための手続きで、遺言の有効・無効を判断するものではありません。










urushihara_law at 16:06|PermalinkComments(0)弁護士業務 

2021年02月26日

強き蟻

 遺産目当てに30歳以上も年上の会社役員の後妻として結婚し、夫に遺言書を書かせた上、その死期を早めようと画策する女主人公(伊佐子)とそれに群がる男どもの話です。また、会社役員の財産、遺産をめぐる伊佐子と先妻の子(娘2人)との醜い争いも描かれています(昭和45年)。
 文庫解説によれば、伊佐子とは人面獣心のとんでもない女、奇形で恐ろしい人物と評されています。
こういう悪女は、「けものみち」の成沢民子も同じようであったなと思いました。

 その伊佐子に群がる男の一人として弁護士の佐伯が登場します。
 佐伯弁護士は、35歳で(伊佐子より2歳年下)、3年前に独立した刑事専門の弁護士という設定です。そして、伊佐子から依頼を受けて、殺人罪で逮捕起訴された伊佐子の若い燕である石井の刑事弁護を担当しますが、間もなく伊佐子と深い関係になります。佐伯弁護士は妻子もあるのに、法律や直接の禁止規定がないとはいえ依頼者とそういう関係になるのは弁護士としてあるまじき所業です。さらに、伊佐子に旅館経営の共同出資、共同経営を持ちかけます。
 刑事弁護の方は、元々事件自体、検察による殺人罪での起訴というのがかなり無理な構成という気がしますが、それはさておき石井を証拠不十分により無罪判決へと導きます。しかしながら、被告人の嫌疑をはらすという被告人の利益よりも、主に弁護士としての功名心から弁護活動を行っており、石井からは自分を材料にして欺かれたと思われてしまいます。
 佐伯弁護士は、このようにとんでもない弁護士であり、最後は不幸な結末を迎えてしまいます。


urushihara_law at 16:29|PermalinkComments(0)松本清張 

2021年02月10日

兄弟姉妹相続(その2)

 夫が亡くなった場合、遺言がなければ、妻4分の3、兄弟姉妹4分の1の割合で相続します。兄弟姉妹の各自は4分の1を人数で割った割合となります。甥姪(代襲相続人)については、被代襲者が受けるべきであった相続分を人数で割った割合となります。
 子どもがいない単身者の場合は、兄弟姉妹が均等の割合で相続します。

 兄弟姉妹が多い場合や甥姪が代襲相続人となる場合、多くの相続人の意向を調整して遺産分割協議がまとまるまで時間と労力が必要となることがあります。
 遺産分割について話合いや協議を行うに際しては、妻の側は、夫が遺言を作成しなかった以上、兄弟姉妹や甥姪にも相続権があるのは法律で認められたものであることを念頭に置いて、他方、兄弟姉妹、甥姪の側は、法律で認められた相続権とはいえ、疎遠であった夫婦に子どもがなかったことや自分の親が先に亡くなっていたという偶然の事情が重なったことによるいわば幸運な相続権であることを念頭に置いて、それぞれ臨んでいただくと無用な紛争を回避できるのではないかと思います。



urushihara_law at 15:52|PermalinkComments(0)弁護士業務