2021年10月01日

成年後見(その3)

 後見制度の利用が望まれるケースとして

 まず、本人に身寄りがないケースや、支援する親族が近くにいないケースが考えられます。
 このようなケースに一定数利用されていることは、申立人が、市区町村長である事件数と本人である事件数を併せると申立件数全体の約4割となっていること(公表資料)からわかります。
 このケースでは、後見人は、当然、親族以外の人ということになります。

 次に、例えば、不動産を処分する、とか、遺産分割協議を行うといった差し迫った必要があるケースです。
 認知症等の理由で判断能力が減退した人は、不動産を処分することができないため、あるいは、遺産分割協議等ができないため、後見人等の選任が必要になります。
 このケースでも、後見人は専門的な知識を必要とするといった理由から、親族以外の人が選任されることが多いと思います。
 ただ、後見人は、一旦選任されると、原則として本人が亡くなるまで継続しますので、申立時の目的を達成しても、あるいは、問題が解決しても終了しません。
 この点、申立てをした親族としては親族以外の人が後見人であり続けることに不満を持つことがあります。
 後見開始後に柔軟に後見人等の交代を可能とするような制度や運用の改善が必要だと思います。




urushihara_law at 16:20|PermalinkComments(0)弁護士業務 

2021年09月15日

成年後見(その2)

 裁判所の公表資料(成年後見関係事件の概況、令和2年1月~12月)のうち、裁判所に選任された後見人(保佐人、補助人を含みます)と本人との関係をみると、子、配偶者をはじめとする親族である割合は全体の2割程度にすぎず、約8割は親族以外の人となっていて、その内訳は多い順に、司法書士、弁護士、社会福祉士、社会福祉協議会、その他となっています。

 これをみると、ほとんどのケースで成年後見開始の申立をした人からすると、全く予想もしていなかった親族以外の人が後見人に選任されているかのような印象を受けるかもしれませんが必ずしもそうとは言えないと思います。
 というのも、申立にあたっては、後見人等候補者を記載して申立をするのですが、親族が候補者として記載されている事件は全体の約23%ということですから、大体は希望どおりの親族候補者が後見人に選任されていると推測できるからです(成年後見人等の候補者については令和2年2月から調査を開始したということです)。
 また、司法書士等の親族以外の人を候補者として申立をした場合も、多くはそのまま候補者が後見人に選任されているのではないかと思われます。

 ただ、親族が候補者として記載されている事件は全体の約23%ということからすると、一般の方には後見人は荷が重くハードルが高い職務と認識されているのだと思います。
 実際、後見人は1年に1回、本人の財産状況や事務状況を裁判所に書面で報告しなければなりませんし、本人の財産を適切に維持管理する義務を負うため、負担感はあると思います。
 この点も、制度が普及しない理由の一つと思います。






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2021年08月27日

脊梁

 難しい言葉のタイトルで「せきりょう」と読み、背ぼね、分水嶺となる山脈といった意味のようです。清張さんは、山脈の脊梁といった表現で他の作品中でも使用されています。 昭和38年の作品。

 強盗殺人罪で逮捕起訴された被告人について、一審、二審とも死刑判決となるも、上告して最高裁で破棄差戻しとなって、差戻し審で裁判継続中であり、10年近い月日が流れ、その元婚約者とその家族にも塁を及ぼすというストーリーです。

 この作品には2人の私選弁護人が登場します。無実の人を誤って有罪とすることがあってはならないと活動して、最高裁で破棄差戻しされたくらいですからそれなりの弁護活動をしているはずですが、あまり重点は置かれておらず、元婚約者の心理状態や生活状況に主眼が置かれています。
 タイトルも元婚約者の証言が有罪無罪を分けるものという意味で付けられたようです。
 弁護士は、むしろ元婚約者の両親からは、自分たちの思いと弁護士の考えにすれ違いがあると思われたり、自分の名前を世間に広めようという気持ちがあってその手柄のために活動していると思われてしまいます。

 重大事件で無罪を主張して裁判は長期に及び、新聞、雑誌などにも注目される有名な事件となっていますから、被告人側関係者の生活状況に大きな影響を及ぼしてしまうことは避けられないと思います。
 今の制度ですと、裁判員裁判になる事件と思われるため、裁判の長期化はある程度回避できるかもしれませんが、ネットなどで中傷されたり、社会的制裁を受けたりすることはより顕著となっているので生活状況に与える悪影響はより深刻なものになっていると思われます。





urushihara_law at 16:45|PermalinkComments(0)松本清張