2021年02月01日

兄弟姉妹相続(その1)

 子どもがいない夫婦の場合、夫の相続人は、妻と夫の兄弟姉妹になります。
 子どもがいない単身者の場合は、相続人は兄弟姉妹になります。
 (ここでは両親は既に他界していることを前提としています)
 そして、その兄弟姉妹が先に死亡している場合は、その子ども(甥、姪)が代襲相続人として相続権が認められます。

 両親が共通の兄弟姉妹であっても関係が疎遠であることは少なくないですが、異父母の兄弟姉妹であればなおさら疎遠であることが予想されます。それでも血縁関係がある以上、生前の交流の濃淡は関係ありません。
 このような疎遠な相続人の立場から、いわば棚からぼた餅式に遺産相続する場合のことを「笑う相続人」ということもあります。

兄弟姉妹、甥、姪の相続権を排除するには遺言書の作成が必要です
 そこで、兄弟姉妹や甥、姪に遺産を取得させたくない場合は、また、笑う相続人を発生させないためには、夫が妻に全財産を相続させるといった内容の遺言書を作成しておくことが不可欠となります。
 遺言者の意思といえども、遺留分(*)を侵害することはできないのですが、兄弟姉妹とその子どもには遺留分が認められていないため遺言者の意思を優先させることができるからです。

*遺留分
 相続人が取得することを民法で保障されている遺産の割合のことで遺言者の意思に優先するもの

urushihara_law at 16:45|PermalinkComments(0)弁護士業務 

2021年01月15日

波の塔

 若い新任検事が主人公の清張作品には数少ない本格的な恋愛小説で、映画化や何度もドラマ化されている著名な作品です(昭和34年から35年にかけての連載)。

 新任の小野木検事は誠実に職務に取り組み、東京地検特捜部にも参加するなど将来を嘱望されています。
 その小野木が真剣に好きになった女性(結城頼子)が人妻であったことで、夫から慰謝料請求される可能性があったことは否定できません。しかし、小野木にとって不運不幸は、頼子と出かけた小旅行がたまたまの台風に見舞われてしまったことや頼子がよりによって特捜部が手掛けていた疑獄事件の被疑者の妻であったことです。
 頼子との関係を被疑者である夫とその弁護人(後出の林弁護士)によって暴かれ、結果、検察官を辞職してしまいます。
 清張さんの作品ストーリーですから、不運な偶然が重なりましたが、ただ、ラストで頼子をああいう結末にしなければならなかったのかという疑問が残り、また、小野木についてはこれからどうやって生きていくのだろうかとその後が気になってしまいます。

 この作品にも、被疑者の弁護人として林弁護士が登場します。しかし、林弁護士は、事件とは直接関係のない私的な小野木と被疑者の妻(頼子)との親密な関係を材料に検察側と取引して事件をつぶそうとする活動に尽力しており、その弁護活動はあまり褒められたものではないと思います。

 なお、本作品は女性雑誌(女性自身)に連載されたのですが、これによって調布市の深大寺が有名になり、また、富士の樹海が自殺の名所になったそうです。


urushihara_law at 16:09|PermalinkComments(0)松本清張 

2020年11月06日

わるいやつら

 タイトルのとおり悪いやつばかり登場する作品です(昭和36年)。
 まず、主人公の二世の病院長医師戸谷信一は色と欲のために殺人を重ねてしまう悪いやつですが、やがて法の裁きを受けます。

 次に、わき役ではありますが、弁護士下見沢が重要な役割を担います。
35歳、独身で、戸谷医師とは5年のつき合いですが、戸谷からは、弁護士の肩書はあるが弁護士の仕事をやっているのか何をやっているのか正体不明であり、見てくれは悪いし女に好かれようはずはないなどと軽蔑されています。なのに金持ちの女性を戸谷に紹介する才能があると描かれています。
戸谷の妻との離婚交渉をまとめるなど弁護士の仕事もしているのですが、後に戸谷を裏切って葬る操作をするとんでもない悪いやつです。
 主人公ではないこともあって、やったことがあいまいな部分はありますが、おそらく犯罪に当たると思いますし、そうでなくても少なくとも当時の弁護士倫理違反としても重い懲戒処分になると思われますが、結末には驚かされます。

 登場する女性陣も負けず劣らず悪いやつばかりです。看護婦長は悪い上に恐ろしいほどですし、戸谷医師が求婚し続ける女性は逆に戸谷を手玉に取って翻弄した悪いやつです。
 架空の小説とはいえ、ここまで悪いやつがそろうと痛快でさえあります。

 この作品は昭和35年1月から36年6月まで週刊誌に連載されたものですが、同時期には並行して「砂の器」や「日本の黒い霧」さらには「球形の荒野」なども連載して書かれています。いずれも傑作ですし、半藤一利さんの「清張さんと司馬さん」(文春文庫)によると、当時の「凄まじい執筆量、字義どおり超人的です。」とあります。









urushihara_law at 12:10|PermalinkComments(0)松本清張