2021年07月27日

一年半待て

 夫殺しの殺人罪で起訴されたヒロインについて、婦人評論家の熱心な支援活動もあって、懲役3年、執行猶予2年の有罪判決がなされるのですが、実は・・・という昭和32年の短編裁判小説です。

 宮部みゆきさんが責任編集されている松本清張傑作短編コレクション上巻(文春文庫)の中で、「特に好きな作品」で、「名作中の名作。これを読まずしてミステリを語るまじ。」とコメントされているほどですので、弁護士は登場しないですが、ここに載せることにしました。

 清張さん自身は、法律の本を読んでいて、一事不再理という条文を見つけてそれをヒントに作品を書いたと言っています(黒い手帳)。

 一事不再理というのは、有罪・無罪の確定判決があった事件については、再度の公訴提起、審理を許さないという刑事裁判の基本原則ですが、それは憲法上の保障でもあります(憲法39条)。

 先の宮部さんによれば、「これをテーマとしたミステリの秀作佳作は他にもありますが、これはまさしく嚆矢。」ということです。
 昭和32年当時に法律書を読んで、それをヒントにこういう作品を書いてしまうところがこの作家の凄いところです。

 ただ、一言すれば、実際に執行猶予を狙って殺人を計画して実行する人が果たしているのかなという気はいたします。

urushihara_law at 17:52|PermalinkComments(0)松本清張 

2021年06月25日

成年後見(その1)

 成年後見というのを耳にされたことがあるでしょうか
 成年後見は、大まかにいうと、認知症などによって判断能力が不充分になった人を援助するための制度で、家庭裁判所が選任した成年後見人が本人に代わって財産管理などを行うというものです。

 制度は2000年に介護保険とともにスタートし、高齢化社会を支える車の両輪という位置づけがされたのですが、介護サービスの利用者が数百万人単位であるのに対し、成年後見の利用者数は、令和2年12月末時点で約23万人となっており(裁判所の公表資料)、普及というにはほど遠い状況です。

 裁判所の公表資料によると、成年後見事件(後見開始の他、保佐開始、補助開始、任意後見監督人選任申立事件を含む)の申立件数は、ここ数年、年間3万5000件から3万7000件となっています。
 認知症の人は、令和2年の推計で600万人超とされ、また、後見開始の原因は認知症だけでなく統合失調症や知的障害なども含むことからするとこの数字はいかにも少ない。

 制度が普及しない理由はいくつか考えられますが、最も大きな理由は、介護保険は保険制度で、40歳以上の全ての国民が保険料を納め(従って認知度も高くなる)、サービス利用者は1割から3割の自己負担でよいのに対し、成年後見は全額利用者負担ということにあるのだろうと思います。

urushihara_law at 13:36|PermalinkComments(0)弁護士業務 

2021年05月21日

相続放棄

 相続放棄は被相続人の遺産(権利義務)を一切引継がないというものですが、家庭裁判所に対し手続きをすることが必要です。この手続きのことを「相続放棄の申述」といいます。

 司法統計によると、近年増加傾向にあって、全国の家庭裁判所への申述件数(新受件数)は平成29年に20万件を超え、令和元年は約22万5000件となっています。
 この数字は、相続人ごとにカウントされますから、被相続人ごとにカウントされる遺産分割調停の数とは単純比較はできませんが、こちらは比較的多いのではないかと思います。
 放棄をする理由の大半は、資産よりも負債の方が多い債務超過のようですから、債務超過で亡くなる方が増えているのだと思います。

 手続きにあたっての注意点として、以下の3つが挙げられます。

1 手続きの期限が定められていて、原則として相続の開始があったことを知った時から3か月以内に行う必要があります(民法915条)。

2 相続財産を処分すると法定単純承認といって放棄することが認められなくなってしまいます(民法921条)。どのような行為が法定単純承認になるのかについては色々と問題あるところですが、ここでは弁護士に相談してくださいとさせていただきます。

3 先順位の相続人が全員放棄すると今度は次順位の推定相続人が相続人になります。例えば、Aさんが亡くなってその子どもが全員放棄すると今度はAの兄弟姉妹が相続人になります(Aさんの両親は既に亡くなっていることを前提としています)。
 従って、子が全員放棄する場合、次順位の推定相続人にそのことを伝えるのが親切であり、望ましいということになります。








urushihara_law at 15:46|PermalinkComments(0)弁護士業務