2021年01月

2021年01月15日

波の塔

 若い新任検事が主人公の清張作品には数少ない本格的な恋愛小説で、映画化や何度もドラマ化されている著名な作品です(昭和34年から35年にかけての連載)。

 新任の小野木検事は誠実に職務に取り組み、東京地検特捜部にも参加するなど将来を嘱望されています。
 その小野木が真剣に好きになった女性(結城頼子)が人妻であったことで、夫から慰謝料請求される可能性があったことは否定できません。しかし、小野木にとって不運不幸は、頼子と出かけた小旅行がたまたまの台風に見舞われてしまったことや頼子がよりによって特捜部が手掛けていた疑獄事件の被疑者の妻であったことです。
 頼子との関係を被疑者である夫とその弁護人(後出の林弁護士)によって暴かれ、結果、検察官を辞職してしまいます。
 清張さんの作品ストーリーですから、不運な偶然が重なりましたが、ただ、ラストで頼子をああいう結末にしなければならなかったのかという疑問が残り、また、小野木についてはこれからどうやって生きていくのだろうかとその後が気になってしまいます。

 この作品にも、被疑者の弁護人として林弁護士が登場します。しかし、林弁護士は、事件とは直接関係のない私的な小野木と被疑者の妻(頼子)との親密な関係を材料に検察側と取引して事件をつぶそうとする活動に尽力しており、その弁護活動はあまり褒められたものではないと思います。

 なお、本作品は女性雑誌(女性自身)に連載されたのですが、これによって調布市の深大寺が有名になり、また、富士の樹海が自殺の名所になったそうです。


urushihara_law at 16:09|PermalinkComments(0)松本清張