種族同盟疑惑

2020年09月29日

奇妙な被告

 強盗殺人の罪で逮捕、起訴された被告人について、国選弁護人に選任された若い弁護士(原島弁護士)が、その熱心な弁護活動によって無罪判決を得るのですが、その約1年後に真犯人であったことがわかったという短編作品です(昭和45年)。
 実は真犯人であったということでは前の「種族同盟」と同じですが、こちらの被告人は判決後弁護士とかかわりなく終わっている点で異なっています。

 この作品でも、やはり国選弁護人について、「通りいっぺんで、義務的な弁論しかしてくれない、という非難になる。」といいのが出てきます。しかし、その後に続けて、「この悪評のために、国選弁護人も「名誉回復」のために以前よりよほどよくなったとの評判を最近聞くようになった。」とあります。種族同盟から3年後の作品ですが、当時、実際にそのような多少の状況変化があったのでしょうか

 その原島弁護士は、関係者十数名に事情を聞いて回り、法医学者の意見を聞きに行って証人として出廷してもらうなど実に熱心に弁護活動をしています。そして、被告人の自白の任意性、真実性を争って、結果、証拠不十分により無罪判決となったのです。
 しかし原島弁護士は、判決の約1年後にふとしたことから被告人が真犯人であったことに気がつきます。不条理な結果ではありますが、弁護活動としては適切であったということになります。

 作品中、イギリスの「無罪判決の事例研究」というのが出てくるのですが、清張さんは、うしろがきで、「こういう外国の裁判例を出すことも、小説のリアリティを与える要素になるかと思う。」と書いていて、司法省が大正時代に出した司法資料にも目を通していることがわかります。また、作品中にもう一つ、司法研修所の「事実認定」についての教材からの引用がなされているのですが、こういったものにまで関心をもって読んでおられることに驚かされます。


urushihara_law at 16:37│Comments(0)松本清張 

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