弁護士業務

2021年06月25日

成年後見(その1)

 成年後見というのを耳にされたことがあるでしょうか
 成年後見は、大まかにいうと、認知症などによって判断能力が不充分になった人を援助するための制度で、家庭裁判所が選任した成年後見人が本人に代わって財産管理などを行うというものです。

 制度は2000年に介護保険とともにスタートし、高齢化社会を支える車の両輪という位置づけがされたのですが、介護サービスの利用者が数百万人単位であるのに対し、成年後見の利用者数は、令和2年12月末時点で約23万人となっており(裁判所の公表資料)、普及というにはほど遠い状況です。

 裁判所の公表資料によると、成年後見事件(後見開始の他、保佐開始、補助開始、任意後見監督人選任申立事件を含む)の申立件数は、ここ数年、年間3万5000件から3万7000件となっています。
 認知症の人は、令和2年の推計で600万人超とされ、また、後見開始の原因は認知症だけでなく統合失調症や知的障害なども含むことからするとこの数字はいかにも少ない。

 制度が普及しない理由はいくつか考えられますが、最も大きな理由は、介護保険は保険制度で、40歳以上の全ての国民が保険料を納め(従って認知度も高くなる)、サービス利用者は1割から3割の自己負担でよいのに対し、成年後見は全額利用者負担ということにあるのだろうと思います。

urushihara_law at 13:36|PermalinkComments(0)

2021年05月21日

相続放棄

 相続放棄は被相続人の遺産(権利義務)を一切引継がないというものですが、家庭裁判所に対し手続きをすることが必要です。この手続きのことを「相続放棄の申述」といいます。

 司法統計によると、近年増加傾向にあって、全国の家庭裁判所への申述件数(新受件数)は平成29年に20万件を超え、令和元年は約22万5000件となっています。
 この数字は、相続人ごとにカウントされますから、被相続人ごとにカウントされる遺産分割調停の数とは単純比較はできませんが、こちらは比較的多いのではないかと思います。
 放棄をする理由の大半は、資産よりも負債の方が多い債務超過のようですから、債務超過で亡くなる方が増えているのだと思います。

 手続きにあたっての注意点として、以下の3つが挙げられます。

1 手続きの期限が定められていて、原則として相続の開始があったことを知った時から3か月以内に行う必要があります(民法915条)。

2 相続財産を処分すると法定単純承認といって放棄することが認められなくなってしまいます(民法921条)。どのような行為が法定単純承認になるのかについては色々と問題あるところですが、ここでは弁護士に相談してくださいとさせていただきます。

3 先順位の相続人が全員放棄すると今度は次順位の推定相続人が相続人になります。例えば、Aさんが亡くなってその子どもが全員放棄すると今度はAの兄弟姉妹が相続人になります(Aさんの両親は既に亡くなっていることを前提としています)。
 従って、子が全員放棄する場合、次順位の推定相続人にそのことを伝えるのが親切であり、望ましいということになります。








urushihara_law at 15:46|PermalinkComments(0)

2021年04月28日

遺産分割調停

 これまで見てきた自筆証書遺言と公正証書遺言の作成数から、相続のほとんどは法定相続に従ってなされていることがわかります。

 それでは、遺産分割調停の申立件数はどれくらいあるのかと司法統計を見てみると、令和元年の全国の家庭裁判所への申立件数(新受件数)は13,801となっていて、ここ数年は概ね13,000から14,000件の間で推移しているようです。
 なお、そのうちの1割以上が東京家庭裁判所への申立となっています。

 弁護士が関与する紛争案件でも調停申立てには至らずに交渉によって解決するものもあるため、上記数字は紛争案件の一部であることになりますが、想像していたより少ないと思いました。
 また、この数字から、相続のほとんどは大きな紛争やトラブルなく解決しているようであることがわかりました。

urushihara_law at 16:37|PermalinkComments(0)

2021年04月15日

公正証書遺言

 公証人が関与して作成される遺言であり、弁護士が勧めるのは公正証書遺言と申しましたが、こちらもどれくらい作成されているか調べてみました。
 日本公証人連合会という全国組織が1年間に全国で作成された件数を毎年公表しているのですが、先月末に令和2年中の作成数が発表されて、9万7700件ということでした。
 ここ数年は毎年11万件前後で推移していたのですが、令和2年に10万件を下回ったのはコロナ禍の影響で高齢者の方が外出を控え、従って公証役場に出向くことを控えたからだと思われます。
 自筆証書遺言より多いとはいえ年間10万件から11万件というのは、75歳以上の高齢者人口が約1800万人であること(2018年、2019年の人口推計)からするとやはり少ないと思います。
 
 公正証書遺言があるからといって、遺留分の問題があるなど100%トラブルを回避できるわけではありませんが、特に以下のようなケースは紛争をできるだけ回避するため遺言作成は義務といってもよいと思います。
・子がいないが、兄弟姉妹や代襲相続人の甥姪が複数いる場合
・先妻の子と後妻がいる場合
 その争いは松本清張の「強き蟻」でも描かれていましたが、現実に紛争が多いです
・事実婚の夫婦の場合
 現行法上、夫、妻には相続権が認められていないため、遺産を与えるには遺言作成が必要です。
・実子であっても人数が多くなるほど紛争の可能性は高まる

 
 なお、トラブル回避という意味では、遺言を作成するにあたっては、特に遺留分を侵害するような内容である場合は、そのことを推定相続人に話をして自分の思いや考えを説明しておくのがよいと思います。もし、それができないのであれば、せめて遺言書の中に思いや考えを記載しておくべきだと思います。











 

urushihara_law at 16:02|PermalinkComments(0)

2021年03月26日

自筆証書遺言(その2) 遺言書保管制度

 自筆証書遺言の利用を促進するために最近以下のような法改正等がなされました。
・相続財産の目録を添付する場合に、目録については自書でなくてもよいとされ、例えば、パソコンで作成したものでもよいことになりました(民法改正)。
・法務局で遺言書を保管する制度が創設されました(法務局における遺言書の保管等に関する法律)。
 自筆証書遺言は紛失や忘失のリスクがあり、さらには隠匿、改ざんのおそれがあるため、それらを防止し、遺言書の存在の把握を容易にするべく2020年(令和2年)7月に制度がスタートしました。
 そして、遺言者が亡くなった(相続開始)後に法務局から遺言書情報証明書が交付されると家庭裁判所での検認手続きは不要とされました。

 それらによって、自筆証書遺言の利用が増えることが期待されます。
しかしながら、遺言書保管制度は保管申請に際し、法務局で方式面はチェックしてくれますが、内容面までチェックしてくれるものではないため確実に遺言執行できることまでは保証されません。従って、利用は単純な内容のものに限定されるのではないかと思われます。
 
 弁護士が勧めるのはやはり作成手数料がかかっても内容面もチェックされる公正証書遺言ということになります。

urushihara_law at 15:25|PermalinkComments(1)