弁護士業務

2021年04月28日

遺産分割調停

 これまで見てきた自筆証書遺言と公正証書遺言の作成数から、相続のほとんどは法定相続に従ってなされていることがわかります。

 それでは、遺産分割調停の申立件数はどれくらいあるのかと司法統計を見てみると、令和元年の全国の家庭裁判所への申立件数(新受件数)は13,801となっていて、ここ数年は概ね13,000から14,000件の間で推移しているようです。
 なお、そのうちの1割以上が東京家庭裁判所への申立となっています。

 弁護士が関与する紛争案件でも調停申立てには至らずに交渉によって解決するものもあるため、上記数字は紛争案件の一部であることになりますが、想像していたより少ないと思いました。
 また、この数字から、相続のほとんどは大きな紛争やトラブルなく解決しているようであることがわかりました。

urushihara_law at 16:37|PermalinkComments(0)

2021年04月15日

公正証書遺言

 公証人が関与して作成される遺言であり、弁護士が勧めるのは公正証書遺言と申しましたが、こちらもどれくらい作成されているか調べてみました。
 日本公証人連合会という全国組織が1年間に全国で作成された件数を毎年公表しているのですが、先月末に令和2年中の作成数が発表されて、9万7700件ということでした。
 ここ数年は毎年11万件前後で推移していたのですが、令和2年に10万件を下回ったのはコロナ禍の影響で高齢者の方が外出を控え、従って公証役場に出向くことを控えたからだと思われます。
 自筆証書遺言より多いとはいえ年間10万件から11万件というのは、75歳以上の高齢者人口が約1800万人であること(2018年、2019年の人口推計)からするとやはり少ないと思います。
 
 公正証書遺言があるからといって、遺留分の問題があるなど100%トラブルを回避できるわけではありませんが、特に以下のようなケースは紛争をできるだけ回避するため遺言作成は義務といってもよいと思います。
・子がいないが、兄弟姉妹や代襲相続人の甥姪が複数いる場合
・先妻の子と後妻がいる場合
 その争いは松本清張の「強き蟻」でも描かれていましたが、現実に紛争が多いです
・事実婚の夫婦の場合
 現行法上、夫、妻には相続権が認められていないため、遺産を与えるには遺言作成が必要です。
・実子であっても人数が多くなるほど紛争の可能性は高まる

 
 なお、トラブル回避という意味では、遺言を作成するにあたっては、特に遺留分を侵害するような内容である場合は、そのことを推定相続人に話をして自分の思いや考えを説明しておくのがよいと思います。もし、それができないのであれば、せめて遺言書の中に思いや考えを記載しておくべきだと思います。











 

urushihara_law at 16:02|PermalinkComments(0)

2021年03月26日

自筆証書遺言(その2) 遺言書保管制度

 自筆証書遺言の利用を促進するために最近以下のような法改正等がなされました。
・相続財産の目録を添付する場合に、目録については自書でなくてもよいとされ、例えば、パソコンで作成したものでもよいことになりました(民法改正)。
・法務局で遺言書を保管する制度が創設されました(法務局における遺言書の保管等に関する法律)。
 自筆証書遺言は紛失や忘失のリスクがあり、さらには隠匿、改ざんのおそれがあるため、それらを防止し、遺言書の存在の把握を容易にするべく2020年(令和2年)7月に制度がスタートしました。
 そして、遺言者が亡くなった(相続開始)後に法務局から遺言書情報証明書が交付されると家庭裁判所での検認手続きは不要とされました。

 それらによって、自筆証書遺言の利用が増えることが期待されます。
しかしながら、遺言書保管制度は保管申請に際し、法務局で方式面はチェックしてくれますが、内容面までチェックしてくれるものではないため確実に遺言執行できることまでは保証されません。従って、利用は単純な内容のものに限定されるのではないかと思われます。
 
 弁護士が勧めるのはやはり作成手数料がかかっても内容面もチェックされる公正証書遺言ということになります。

urushihara_law at 15:25|PermalinkComments(1)

2021年03月12日

自筆証書遺言(その1)

 「相続」を「争族」としないために遺言を作成しましょうとはよく言われるところであり、弁護士の立場からそのとおりだと思います。

 では実際どれくらい遺言の作成がなされているか調べてみました。
 遺言には、主に自筆証書遺言と公正証書遺言があるのですが、まず自筆証書遺言について
 これは自分で全文、日付、氏名を自書(手書き)し、押印することで成立する遺言ですが、遺言者が亡くなった後、家庭裁判所で検認(*)という手続きをとる必要があります。
 そこで裁判所が発表している司法統計をみてみると、全国の家庭裁判所への検認の申立件数(正確には新受件数)は平成28年から年間1万7000件台で推移し令和元年は1万8000件を超えて18,625件となっています。

 検認手続きにあがってこない埋もれたままの遺言書があることも想像されますが、遺言の執行(不動産の相続登記や金融機関の相続手続きなど)には検認を経ていることが必要ですから、それらはなかったのも同然であり、ここでは無視してよいと思います。

 従って、検認件数をもって自筆証書遺言の作成数とみてよいと思いますが、この数字は、全国の年間死者数のうち75歳以上の方は、平成28年頃から毎年だいたい100万人位のようですから(人口統計資料集による)、単純な見方かもしれませんが、その人数からするとかなり少ないのではないかと思います。

*検認
 遺言書の形状、状態などを確認し、その内容を明確にして遺言書の偽造・変造を防止するための手続きで、遺言の有効・無効を判断するものではありません。










urushihara_law at 16:06|PermalinkComments(0)

2021年02月10日

兄弟姉妹相続(その2)

 夫が亡くなった場合、遺言がなければ、妻4分の3、兄弟姉妹4分の1の割合で相続します。兄弟姉妹の各自は4分の1を人数で割った割合となります。甥姪(代襲相続人)については、被代襲者が受けるべきであった相続分を人数で割った割合となります。
 子どもがいない単身者の場合は、兄弟姉妹が均等の割合で相続します。

 兄弟姉妹が多い場合や甥姪が代襲相続人となる場合、多くの相続人の意向を調整して遺産分割協議がまとまるまで時間と労力が必要となることがあります。
 遺産分割について話合いや協議を行うに際しては、妻の側は、夫が遺言を作成しなかった以上、兄弟姉妹や甥姪にも相続権があるのは法律で認められたものであることを念頭に置いて、他方、兄弟姉妹、甥姪の側は、法律で認められた相続権とはいえ、疎遠であった夫婦に子どもがなかったことや自分の親が先に亡くなっていたという偶然の事情が重なったことによるいわば幸運な相続権であることを念頭に置いて、それぞれ臨んでいただくと無用な紛争を回避できるのではないかと思います。



urushihara_law at 15:52|PermalinkComments(0)